いいんじゃないですか


「僕の知り合いに趣味で作家やってる奴がいるんですけどね」
そうケイイチは切り出した。
「小説の登場人物の性格をきっちり書くために、っていう方法が幾つかあるらしいんですけど、マキさん、興味あります?」
「はい」
「受け売りですけど、例えば100万円、自由に使えるお金がポンと手元に入ったら何に使うか、って質問するんです。マキさんだったら何に使います?」
「100万円? えーと、自由にってことは家計とかは無視ってことですよね?」
「ええ」
「うーん。ブランド物なんかには興味がないから……免許? 車の免許を取って車を買って、それでドライブとか、ですかね」
「なるほど。ドライブ、いいんじゃないですか? それ。僕は旅行でもしたいですね」

マキは普段、電車とバスと徒歩なので、ドライブというのは随分と楽しいように思えた。夫も免許を持っていないので車に乗る機会は少なく、旅行と呼べそうな移動もした経験がない。唯一は修学旅行くらいだろうか。大学の卒業旅行もやっていないので。
「つまり、マキさんも僕も、普段とは違ったことをしたがっているって、そういうことでしょうね、きっと。で、ドライブとか旅って、そんなに突飛な話でもないですから、お互い、そういうことをやればいいでしょう」

それからしばらく、お互いに旅をするならどこがいいかとか、そういった話で盛り上がった。

免許や車がなくても、電車だ飛行機だを使えば旅行は出来る。その旅先で出会ったらそれはそれで楽しいかも、ケイイチはそう締めくくった。
悪くない、マキはそう思った。
サテ24

いわゆる草食系ってやつですかね

「僕は、1年前にガールフレンドと別れたんですけど、理由はドラマチックでもなんでもなくて、相手が別の男性と結婚したって、それだけですし」
「それって、浮気されてたってことじゃないですか?」
マキは当然のように尋ねた。
「まあそうなんですけど、実際のところ、僕も気持ちが冷めてたんで、なんというのか、どうでもよかったって感じです。誕生日なんかはあれこれ工夫してましたけど、相手が喜んでてもこっちは正直、冷めてましたから。付き合ってたのも友達の紹介って、ありきたりなパターンですしね」
「何となく解ります。周りはみんな盛り上がってるのに、何故だか私、そういうのが苦手みたいで」
同級生で自分より先に結婚した相手から亭主のグチなどを聞くことは何度もあったが、実際に自分が結婚してみるとそういうことは皆無で、たまたま結婚した相手が良かったのか、或いは誰が相手でもそうだったのかは未だに解らない。

「あれですかね。いわゆる草食系ってやつですかね? 結婚してたりする連中から話は聞くんですけど、なんというのか、リアリティを感じないんですよ。付き合ってた頃は仲が良くて、でも結婚した途端に気分が変わるなんていうのも、ピンとこないですし」
「あ、それも解りますよ。私も自分が結婚したらもっと変わるんじゃないかと思ってたパターンです」

サブコンテンツ

このページの先頭へ